2006年01月15日

ファミリー  2

倉敷市にある美観地区は、川沿いの柳が風に揺れ、白壁の建物が続き、雰囲気のある喫茶店や、みやげ物や、備前焼の店、それに美術館もあり、女同士でそぞろ歩くには格好の場所だった。お目当ての「大原美術館」に入り、有名なエル・グレコの「受胎告知」の前でその神秘性と迫力に息を呑み、時間を忘れて佇んでいた。
「佐恵子、この絵に一目ぼれね。」と恵子に言われるまで、我を忘れて引き込まれていた。
私の美術館好きは、この絵画との出会いから始まったようだ。この場所になら一日中いても飽きない自信がある。自分では何も描けないけれど。
恵子は彫刻や立体作品の方に興味があるようで、そちらを丁寧に見ていた。
「大原美術館」の隣には、「エル・グレコ」という喫茶店があった。明治の和モダンという感じのお店で、私達は足を休めた。
「ねえ、学生の頃はお互いつらい恋をしてたよね。相手の人のこと好きになり過ぎて面倒見すぎて嫌われた。面倒見が良すぎるところはお互いよく似ていたね。好きになり過ぎて追いかけ過ぎると嫌われると分かっているのに、どうしようもなかった。でも、今は恵子愛されていて幸せそうね。恵子のご主人は、恵子のことかわいくて仕方ないっていう感じでしょ。」
「そうかな。まあそうかもしれない。けれど今でも私、主人のこと色々してあげるのが好きなのよ。パリッとしたワイシャツに、折り目のついたハンカチを毎日持たせるのが、うれしくて。ネクタイも結んであげるんだから。」
「良い奥さんだこと。そういうことに幸せを感じられる恵子だから、かわいいのよね。私はだめだな。主人にもっと自立してほしいと思ってしまう。「自分のことくらい自分でしなさい。」って言いはしないけどなんとなく態度に出てしまうから、かわいくないのよね。」
「でも佐恵子のご主人は、そんな強気でちょっと男勝りなあなたのことが好きなんじゃない。昔の彼にふられた時は、どうなることかと心配したけれど、良い人にめぐり会えてよかったね。」
「独占欲が強いことだけがちょっとね。でも子どもが好きな優しいパパだし、私のわがままも聞き入れてくれるし彼といると、つっぱらない素の私でいられるから楽なんだ。」
「私は、家族ができたことが一番うれしい。主人は営業の仕事をしているから、いつも帰りは遅くてほとんど母子家庭状態だけど、待てる人がいるだけで幸せ。」
お互のろけあっただけだったけど、楽しいおしゃべりはいつまでもつづいた。

posted by 佐恵子 at 23:04| Comment(2) | TrackBack(0) | ファミリー | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
続くとは思ってもいなかったので
意外な展開に喜んでいます。
実話とフィクションが入り交じったような
展開ですね。
Posted by awakak at 2006年01月16日 21:12
物語を書き始めると、次のストーリーのことで頭がいっぱいになり、日常のいやなことも忘れてしまいます。
もっと意外な展開になるかも、、、。

いつもコメントいただきありがとう。
Posted by 佐恵子 at 2006年01月16日 23:44
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