2006年01月30日

ファミリー   5

恵子は夫への不信感を子育てに没頭することで、打ち消していたのかもしれない。
5歳になった次男のアトピー性皮膚炎は、なかなか良くならなかったので、2週間おきの通院、風呂上りに塗る2種類のステロイド剤、卵、麦を使わない食事。毎日の食べ物の記録はかかせなかったし、他の二人に分け隔てなく接することにも神経を使っていた。
「下の二人が幼稚園に行っているとき、2年生になった長男を膝に座らせて、
 「お兄ちゃん、いつもがまんばかりさせてごめんね。」って、言ったりするのよ。」
とつらそうに話した。

恵子の夫の毎週の外泊は、いつの間にかあたりまえになってしまったようだけれど、休日は3人の子どもと共に過ごす時間を大切にして、公園や、川遊び、虫取り、海水浴、など自然に触れ合うことを教えてくれていたようだった。
夏休みに恵子の家族が山口の実家へ帰省したとき、私の家族と一緒に海辺のログハウスを借りて、3日間過ごしたことがあった。恵子の夫は瀬戸内海の遠浅の穏やかな海が気に入ったようで、子ども達と本当に楽しそうに遊んで、我が家の二人の子ども達もすっかり彼になついてしまった。
「むじゃきで、少年のように遊べるところが、ご主人のかっこよさね。」と私が言うと
「私の前では、そんなでもないのよ。でも、優しさは昔と変わらないから、このままでいいんだ。」と、夕暮れの海を眺めながら恵子はつぶやいた。
「あんなに子煩悩で、家族を大切にしている人だから、もし恵子が心配しているようなことがあったとしても、きっとまた恵子の元へ帰ってくるよ。」
「そうだといいけど。そう、信じたいけど。」と、頼りない返事だった。
「この頃はちゃんと寝られてるの。」と私が聞くと
「軽い安定剤もらってるの。でも、毎日飲んでいるわけじゃないから、大丈夫よ。眠れない時だけだから。」
「ご主人はそのこと知っているの。」
「うん、知ってる。「あんまり頑張りすぎるな。」って心配してくれた。」
「そうか、自分が原因だなんて思ってないのね。「あなたがよそに泊まるとき、不安で眠れなくなるのよ。」と言ってみなさいよ。」
「いつか、二人で向き合って話したいとは思っているんだけど、毎日一緒に生活しているのになかなか切り出せなくて。でも、この夏の間にきっと話してみるから。」
「本当に、一つ屋根の下で同じものを食べ、一緒にテレビを見たり、子育てしたりしていても、心の中で考えていることの全てを分かり合うことはできないものね。」
「だから、その日の優しさや、思いやりある言葉、それを信じたいの。目の前の瞬間々が、彼の真実だと思いたいの。」
posted by 佐恵子 at 22:00| Comment(4) | TrackBack(0) | ファミリー | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
たまたま、今1975.9.30拓郎オールナイトニッポン第51回最終回を聞いています。伝説の「拓郎離婚告白」放送です。
離婚は出会いそのものが間違っていたのかもしれない、でもそれは最初は全くわからない。
何もわからず親のススメで見合いをして、なんとなく結婚して、ところが結婚してから恋愛が始まるという夫婦もいます。
拓郎の場合、私もそうですが、付き合い始めてこの女しかいないと思いながら、10年15年と過ぎるとだんだんズレが生じて来る。それでも修復しようと努力しますが、ズレは広がるばかり。結局このままではお互い傷つけ合うだけだと結論を下すのです。
恵子さんの場合一方的に旦那さんが悪いような、旦那さんの話が聞けないからしょうがないのだけれど、そんなように聞こえます。拓郎が夫婦のことは夫婦でしかわからないといっていますが、その通りだと思います。それは親友にも親にも理解できない。
拓郎の放送を聞いて改めてそう実感しました。
Posted by ひま at 2006年02月02日 20:50
それぞれの家庭には、それぞれのありかたがあって、それぞれ夫婦は違っているのだと思います。ひまさんが言われるように、夫婦でしか分からないことのほうが多いのでしょう。
良い妻で、良い母が、必ず良き連れ合いになるかどうかは疑問です。良き夫で、良き父も同じです。
心の奥の深いところでつながっている関係を保てれば、絆となっていくのでしょうか。
Posted by 佐恵子 at 2006年02月03日 00:04
>だから、その日の優しさや、思いやりある言葉、それを信じたいの。目の前の瞬間々が、彼の真実だと思いたいの。

信じたら駄目。
信じる者は救われない。
信じるのは、自分の判断のみ。
自分が感じたことが正しいと思わなくっちゃ。
でも、本当は信じたいよね。
愛されていると信じたいよね。
優しい言葉をかけてくれた、
それが真実だと信じたいですよね。
だから、人間、難しい!
Posted by awakak at 2006年02月04日 08:16
人の心は、日々の流れの中で少しずつ変わってゆくものですね。
夫婦は長い付き合いになるから、相手を信じてないとやってゆけないし、信じすぎても続かないように思います。
恋人同士だったときには気付かなかった、お互いの本質が見えてきたとき、すべてを受け入れられるかどうかが、第一関門でしょうか。
子どもが成長してから、再び二人になってからは第二の関門かもしれません。家は二人で出かけられるコンサートがあって救われています。
Posted by 佐恵子 at 2006年02月04日 23:46
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