2006年05月14日

ファミリー 11

恵子が山口へ墓参りに帰って来たのは退院してから1年が過ぎた頃だった。
「元気そうじゃない。」と言う私に、
「佐恵子がいてくれたからよ。ありがとう。でも病院とは縁が切れなくて、毎週通院しているのよ。今でも時々死にたくなるの。」
とまた、心配なことをちらりと言うのだった。
「ご主人は元気。」
「ええ、この頃は外泊もなくなって、やっと心も体も私のところへ帰ってきてくれたみたい。優しくて、子どもにもいいパパで、それなのにわけもなく不安になるの。やっぱり、この病気すっかり良くなることはないのかな。」

恵子には、小川可奈子さんのことは未だに知らせていない。
「ご主人からは、なにか聞いたの。」と言ってみた。
「いいえ。でも、1年半も定期的に外泊していたということは、浮気ではなくて、本気になりかけていたのかもしれない。それでもちゃんと戻ってきてくれたから、それでいいの。何も言い訳してほしくないし、本当のことを聞きたいとも思わない。聞くのが怖いのかもしれない。今分かっていることは、私には隆也さんが必要だということ。彼のいない人生は考えられないの。
もしかしたら、まだ隆也さんの心の中には残っているのかもしれない、あの人のことが、、、。」

「あの人、、、。 恵子何か知っているの。」

「実は、退院してから姑から少し話しを聞いたんだ。学生時代の女友達から手紙が来て、お見舞いに通っていたらしい、ということ。そして、その人が亡くなったということも。
義母は「隆也は優しい子だから、許してやってね、恵子さんのことはいつもとても大切に思っているのよ。」と言って慰めてくれたけど、私に打ち明けてくれなかったことが悲しかった。それだけ、その人は彼にとって特別な人だったのでしょうね。つらくなって、隆也さんにその人のこと聞いてみようかとも思ったけれど、でももういいの戻ってきてくれたから、それでいいの。彼と別れることは考えられないもの。

退院する時「寂しい思いをさせて、恵子をこんなに苦しめてごめんな。これからは、もっと家族みんなで幸せになろうな。」と言ってくれたから。
そして主人の胸にしがみついて思い切り泣けたの。今までこれほど私の気持ちをぶつけたことはなかった。いつも、良い妻であろうと意識しすぎて、無理していたのかな。これからは少しわがままになろうかと思うの。」

「そうだったの。私、恵子をお見舞いに行った時ご主人からその人のことを打ち明けられたのよ。学生時代になにかと助けられた人だったようね。そして突然彼女は事情があって、姿を消したらしいね。きちんと別れていなかったから、心が残っていたのでしょう。」

「そう、佐恵子は知っていたのね。青春時代の大切な思い出の人だったのでしょう。悔しいけれど、亡くなった人には勝てそうもないから、彼を追いつめてもしようがないから、私はこれからまた私達の思い出をたくさん作って、我が家の歴史を作るつもり。

それからこの前ね、近所の人の着物の着付をしてあげたらとても喜ばれたの。せっかく、専門学校で勉強したのだからこれから少しずつ家庭以外の自分の世界も広げて行きたいと思い始めているの。子どもの友だちの七五三の着付も頼まれているのよ。」

私と恵子は和装専門学校で共に学んだ仲だった。「自分の世界を広げて行きたいとい」いう話しになって、やっと恵子に笑顔が見えた。
posted by 佐恵子 at 10:05| Comment(2) | TrackBack(0) | ファミリー | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
佐恵子さん物語の再開ですね。
連休は寒くて・・・体のバランスが崩れ
テンションが下がり気味体が五月病です。
佐恵子さんは日常のリズムを取り戻し
ましたか?


若い頃はとかく何事も白黒はっきり
させたいほうだったかな?
恵子さんもきっと元気に自分をとり戻して
いけるようですね。
着付けですか・・いいなー
家庭と両立させながら
どんどん自己実現して眠ってる才能を
開花させてほしいです。

昨日体が今ひとつだったので
ZARDの「負けないで」聴きながら
(拓郎さんの歌でなくてすみません。)
連休できなかったかたづけしてたら夫が
作業着買ってくるってでかけました。
そのついでにカーネーションを買ってきて
くれました。
娘からは若いデザインの洋服が届きました。
(つま恋に着て行こうかな?)
私の日頃の気持ちが伝わったようで心が
和みました。


手前みそですみません。
私って単純ですね。(笑)




Posted by たえこ at 2006年05月14日 14:34
たえこさん、私はなんとか元気にやっています。
きょうは主人がゴルフに出かけ、久しぶりにのんびり一人の時間を楽しみました。

カーネーションや、プレゼントで嬉しい母の日になりましたね。
家では、お店の手違いで娘が注文したお花が届かず、残念だったけど、明日まで楽しみにしています。

なかなか更新できないこともあるけど、また読んでね。
Posted by 佐恵子 at 2006年05月14日 22:19
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