2014年01月09日

白のロングコート

洋服箪笥の奥にしまい込んでいた白のロングコート。
JRでの通勤になって、着てみようかと思った。
上等のコートだったはずだけど、テーラーの襟が細くて、なんだかレトロなかんじ。
箪笥の中で30年以上出番がなかったコートだもの、仕方ない。
どうして今まで捨てなかったんだろう。
最後にこのコートで出かけたのはいつだったのだろう。
ぼんやりと思い出してみる。

そう、あの人に「終わりにしよう。」と言われた、あの冬の日に着ていたんだ。
コートの中には、白い花のモチーフをつないだ後ろボタンのブラウス。
そして、赤いカーディガン。
白いコートの中は、白いブラウスがおしゃれだと決めていた。

もう、あの人が私とは別の人を好きになっていることは知っていたのに、
それでも最後にもう一度だけ会いたくて。

とても寒い日だった。

どうして捨てられなかったのかということさえも忘れていたけど。

袖を通してみると、あの日のせつなさが蘇った。
箪笥の奥の白のロングコートは、心の奥の忘れかけた青春の傷み。

あの頃の一途な情熱と、ときめきがなつかしい。

もう2度と着ることもないだろう、白のロングコート。
ずっと捨てることもできないだろう、白のロングコート。
posted by 佐恵子 at 23:24| Comment(0) | TrackBack(0) | short story | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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