2007年11月04日

藍色のベスト

あなたの瞳、深い深い海の色
その色と同じ毛糸を見つけて
お誕生日にベストをプレゼントしようと
ぶきっちょな私がはじめて編みあげた。

しゃいなあなたには
派手なパッケージは嫌われそうで
どこにでもあるような紙袋に入れて
放課後に渡した。
その紙袋、いつまでも机の下に置きっぱなしで
なかなか持ち帰ってもらえなかった。

「やっぱり、私のこと好きではないのね」と
つらい気持ちでながめていた。
交換日記も途絶えがちになって、
放課後のデートも少なくなって。

「また、もとの友達にもどろうよ。」
と言われて、なんにも言えずに涙だけこぼれた。

クラスメイトだったから、毎日あいさつはしたけれど
心は離れていった。
もう、恋人に戻れない。

夏休みに、あなたの野外ライブを見に行って
それから、皆が帰ってから、二人でいろんな話しをしたね。
あなたが少し卑屈なことや、寂しいわけを教えてくれた。
それで、そんなに瞳の色が海の底みたいに蒼いんだとわかった。
時々きらりと光るその瞳が、心の底を見透かすようで
怖いほどだったけれど
私はそこに惹かれていた。

高校3年の最後の文化祭にあなたのバンドが出場すると聞いて
もう、話すこともなくなったけれど見にいった。
体育館のステージに出てきたあなたは
白いシャツの上に藍色のベストを着ていた。
ローリングストーンズの曲を歌った。
ステージのライトの下で、藍色の瞳がキラリと光って、
私を見てくれたような気がした。
藍色のベストが似合っていた。
posted by 佐恵子 at 22:34| Comment(2) | TrackBack(0) | short story | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
♪藍色のベスト            歌になりそうなせつないいい話ですね。
僕には彼の気持ちが少しわかるんです。
僕も高校のとき、すごく孤独で悩み事だらけで、嫌われ者と思い込んでいました。
ある日、体育祭の仮装行列でかぐや姫が月に帰るシーンをやろうとして、主役を決めるときに、僕がひそかに好きだった女性がなんと「○○君がいいと思う」と手をあげて僕を指名しました。頭は真っ白で「彼女まで俺をバカにするのか!」ですごいショックでした。今思えば、違っていたかもです。僕が降り出した雨に気づかず、車輪を作っていたときに、彼女が後ろから傘をさしてくれたのです。その仮装行列のBGMは「旅の宿」でした。ほろ苦く懐かしい思い出です。 ああ、それが青春ですね!
Posted by 流星 at 2007年11月05日 17:48
流星さんへ
私達の青春の思い出には、音楽がかかせませんね。
藍色の瞳の彼は、今でもおじさんバンドで楽しんでいると、同窓会でであった時言っていました。すっかりマイホームパパになって、かつての寂しそうな影はありませんでした。
Posted by 佐恵子 at 2007年11月05日 23:55
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