2005年12月03日

外は白い雪の夜  3  それから

「君の手紙は、文章ではなくていつも詩だね。
いつもの明るさからは想像できない陰のあるところに魅かれてしまう。」

私が出した手紙、どうしたかしら。
他の誰かに読ませたりしないでね。

あなたとの終わり以上の悲しいことは、もう何もないと思っていたけれど。
あれからもっとつらい出来事があって、私には帰る家さえなくなってしまった。
家族がばらばらになってしまったの。

病気の父をおいて、逃げ出すことはできなくて
もう死ぬことを考える暇もなくなった。
毎日必死に生きたの。

あなたの夢は何度も見たけど、手紙を出す勇気はなかった。
いつかあなたに会えたとき、今までよりはいい女になっていようと思ったから、また、新しい仕事も始めたの。


「小指の短い人は、子どもに縁遠い。」占いの人に言われたことがある。
男の人にも縁遠いということかな。

 

これからは一人でやってゆくつもり。
誰かに頼るのはやめる。
あなたには、重い存在だったのでしょう、私。
 
これまで支えてくれてありがとう。

何度手紙を書いても、もう一度会えたとしても
私の真実は、あなたに伝わりそうもないけど。
それでも、何もなかったよりは、よかったの。
あなたに恋して幸せだった。

あなたの大切な人、幸せにしてあげてね。
そして、あなたの夢も大切に。
 

あの日粉雪が降ってくれてよかった。
あなたに恨み言、言わなくてすんだから、
きれいな思い出にできたから。 
posted by 佐恵子 at 08:08| Comment(6) | TrackBack(0) | 外は白い雪の夜 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2005年11月26日

外は白い雪の夜 2

 あの人は知らない  
 
 毎晩涙止まらなかった私を。
 夜明け前にはぼんやりと目覚めて 
 「このまま朝が来なければ良いのに」と心震わせていた私を。

 あの人は気付かない

 アパートの前まで行って
 口紅をドアの下へ置いて来たこと。

 「これで終わりにしよう」と言われた日
 後ろボタンのブラウスを着ていった私の気持ち。

 あの人は知らない

 きれいに死ぬことばかり考えるようになった私を。
 病気になって 仕事もやめてしまった私を。


 あの人と私、それぞれの夢に向かって頑張っていたはず。
 あの頃の私には、あの人の優しさが支えだった。

 あの人は知らない
 しばらく私の中で粉雪が降り続いたこと
 積もった雪はいつまでもとけなかったことを。
 
posted by 佐恵子 at 23:12| Comment(2) | TrackBack(0) | 外は白い雪の夜 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2005年11月23日

外は白い雪の夜

「これで終わりにしよう」
あの人が私を送った車の中で、つぶやくように、でもきっぱりと
言った。
新しい恋が始まっていることは感づいていた。
 
電車を待つホームで、うつむいて涙を隠していたら
ブーツの上に、粉雪が落ちてすぐに解けた。
顔を上げて空を見たら、薄暗い夕空からはらはらと
私の涙みたいに雪が降り始めた。

「これで終わりにしよう」
簡単な言葉。
いつかはこんな日が来るとわかっていたけれど。

あの人と私、最後まで二人にはなれなかった。




あの人と私、似すぎていたから、いつも言葉少なくて、
笑うことも泣くことも怒ることもなかった。
あの人と私、触れ合って慰めあうことだけのために会っていた。
 
海の見える丘、由緒あるお寺の庭、檻のない動物園、
山の中のホテル。
あの人と私の好きな場所。

「小指だけ短いんだね」私の手を見てあの人がつぶやいた。
自分でもきづかなかったのに。
あの人は私を痛いほど見つめてくれた。

あの人の腕の中で私はいつも夢見心地。
それでもいつまでもそうしてはいられなくて、
あの人の優しいしぐさが頼りなかった。
posted by 佐恵子 at 14:03| Comment(2) | TrackBack(0) | 外は白い雪の夜 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする